中国、上海にも色々なお水の種類が増えてきました。
中国のお水の中には、日本では考えられないほど笑ってしまうお水(嘘くさい味の水)があります。
コーヒーは液体、ほとんどがお水でできています。
コーヒーの本などには、お水の種類(質)もコーヒーの味を作る上では大切な要素だと書かれていますが、
実際お水の飲み比べなんてなかなかしませんよね。
今回は珈琲教室に参加してくれたお客さんが何種類かのお水を持ってきてくれたので、
うちでできる限りの飲み比べをしてみました。
お水の違いによって「コーヒーの味はどのように変わってくるのか?」、
通常の珈琲教室から延長して、急遽中国の水飲み比べ&コーヒー抽出による味の違い教室開催です!
今回使った中国の水、合計6本。
左から西蔵(チベット)水、フランスのエビアン、農夫山泉、Limpid、SPA、ボルビック(写真無)。
さて、では実験飲み比べ。
今回は2つの抽出方法を使ってお水の飲み比べをしました。
■3つ穴式(カリタ式)ドリップ(左)
粉の粗さ:中挽き
お湯の温度:85℃
珈琲豆の量:20g
抽出量:300cc
■松屋式ドリップ(右)
粉の粗さ:粗挽き
お湯の温度:90℃
珈琲豆の量:30g
抽出量:300cc(前半150cc後半150cc)
それぞれのコーヒーの入れ方(抽出方法)詳細については、
『3つ穴式(カリタ式)ドリップ』『松屋式ドリップ』←リンクを参照。
■結果
参加された方々(僕も含め)の中では、ボルビックが一番「いい味」という結果になりました。
「いい味」というのは、滑らかである、とろみがある、香りが良い、バランスが良いなどの評価。
コーヒーの味としては、一般の人が好みやすい旨み成分が出ているように感じ、
そのため、「おいしい」という表現になりやすいのかもしれません。
特に飲んだときの「とろみ」感は、他の水と比べても際立っていたと思います(松屋式ドリップの場合)
3つ穴式(カリタ式)ドリップに関しては、コーヒーの質(水の変化)を求める以上にどうしても松屋式ドリップと比較したときの濁り成分が目立ちすぎます。粉の撹拌から出る濁り成分があると、味を捉えにくいこともあったため途中から却下しました。
■その他の水
僕の一番期待していたチベット水は、とろみ感はあるもの、ボルビックのとろみ感には勝てませんでした。
ただ、ボディ感というか、味のぶ厚さ、強さでは、やはりチベット水が勝っており、使い方はTPOで選びたいところ。
エビアンは硬すぎて、少しうるさい味。渋み、雑感(クリーンではない)、角が立つ感覚。
農夫山泉は、まあまあ素直な味になるというか、それは同時に面白みにもかけるというか。焙煎の浅いもの、ソフトな味わいのものには向くような気がします。
Limpidは、特に特筆するものはなく、Limpidを使うぐらいなら農夫山泉のほうがお水としてもコーヒーとしても「おいしさ」の成分は多くあるような気がします。
SPAも、同上。
(このとろみ感があるか、ないかに関しては、一緒に飲み比べをしたIさんが面白いことを発見したので、
Iさんから資料をもらってからここのページにも掲載したいと思います。)
■追記(Iさんからの水資料)
水と珈琲
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 軟水 | 硬水 | 珈琲 | 紅茶 | 緑茶 | |||||
2 | ミネラル分 | 100mg以下 | 200mg以上 | Mgが多い | 硬水 | 軟水 | ||||
3 | マグネシウム・カルシウム | |||||||||
4 | にがり・天然塩 | |||||||||
5 | 「おいしい水」の定義 | |||||||||
6 | 蒸発残留物 | 硬度 | 遊離炭酸 | 臭気 | 残留塩素 | 水温 | 過マンガン酸カリウム消費量 | |||
7 | 30.0 mg/g | 200.0 mg/g | 10.0 mg/g | 100.0 mg/g | 3.0 mg/g | 30.0 mg/g | 3 | 0.4 | 20 | 3 |
8 | 厚生省の「おいしい水研究会」の調査結果 | |||||||||
9 | ||||||||||
10 | pH | 蒸発残留物(mg/g) | Mg | Ca | H2SiO2 | |||||
11 | ボルビック | 7.0 | 130.0 | - | 8.0 | - | 11.5 | - | 31.7 | - |
12 | チベット | 7.0 | 482.0 | 725.2 | 9.4 | 10.5 | 107.1 | 111.1 | 41.6 | 52.5 |
13 | 霖碧 | 7.1 | 303.3 | 319.0 | 5.3 | 11.7 | 42.2 | 42.5 | 78.0 | 97.5 |
14 | 農夫 | 7.3 | 0.5 | - | 4.0 | - | 0.2 | - | ||
15 | H2SiO2:ケイ酸(Siのどの部分に・いくつH2とO2がつくかで呼び名が変わる?、温泉成分>50mg/gで温泉効果) 日本の温泉では100mg/gを超えるところはほとんど無い 一般に飲み物をおいしく飲める適温は体温マイナス25度(だいたい10〜15℃の範囲?)。 |
■ボルビックが高評価を得たことに関して
正直言って、僕の中では意外な結果でした。
ボルビックのお水を、お水単体で飲んだときには、美味しいは美味しいけれど、珈琲に使ったときにはそこまで期待できるものではないと思っていたためです。
それは、僕の好みにも関係してくることですが、僕の好みでは、軟らかすぎる水というのは、
なんだか物足りない味(弱い味、軽い味)になりやすい傾向があるからです。
どんなコーヒーの味を作るか、最終的な味のイメージによって、使用する水の捉え方も変わってきますが、僕の好みはある程度の硬さと円みがある水が好みなので。
だからこそ、チベットの水の適度な硬さと円みには期待していたのですが・・・。
まさかボルビックが来るとは、面白い実験でした。
■総評
今回の実験結果だけで、決め付けてしまうことはオススメしません。
今回は、『三つ穴式(カリタ式)ドリップ』と『松屋式ドリップ』2種類の抽出方法で試してみましたが、
抽出の方法だけでも随分味が変わってきます。
味が変わってくることは決して悪いことではなく、抽出方法が変われば味も変わってくるということを踏まえた上で、
「ではどのような水を使うのか?」「どのような抽出方法をするのか?」と考える必要があります。
ハンドドリップのように人的作業のものは、それだけで非常に複雑な要素が絡まり、微妙な差で、面白いぐらいにコーヒーの味も変化します。
言葉だけで説明をしてしまうと難しく聞こえるかもしれませんが、気軽に楽しみながら挑戦してほしいと思います。コーヒーの技術というのは、誰でもが練習をすれば必ず習得することができるものですからね。
あと、最終的な味の判断は、コーヒーの液体を作ってみて飲んでみること。
ボルビックが結果的に高評価を得たことでもわかりますが、頭で思っている(予測している)ことと、最終的な結果というのは必ずしも一致するものではありませんからね。そういう意味では、今回もいい勉強になり面白かったです。
もっと多くのデータを集め、これからも色々試していきたいと思います。
■開催日
2007.11月中旬
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